人間は「死」を意識すると特別な能力を引き出すことができるのだという。研究グループが「脅威管理理論」による効果だと指摘する、ある実験結果が非常に興味深いです。
「死」を意識することによるパフォーマンスの向上
実験1
研究グループは、バスケットボールの選手らを集めて研究者の1人と1対1の試合をやってもらいました。
次に、被験者らを2つのグループに分けて、半分の人には試合の感想を書くアンケートに回答してもらい、残りの半分の人には「自らの死」についてどのように考えているかについて、回答してもらいました。
その後、再びバスケットボールの試合をしてもらったところ、「死」についてのアンケートに回答した被験者らはパフォーマンスが40%も向上したという。
一方、試合の感想について書いた被験者らのパフォーマンスには、変化がみられませんでした。
実験2
2つ目の実験では、1分間でシュートをどれだけ決められるかを競うゲームを実施す。
再び被験者を2つのグループに分け、それぞれの被験者らに30秒間の個人指導とルールの説明を受けさせました。
ただし、半数の被験者には「DEATH」という単語と頭蓋骨の柄がプリントされたTシャツを着た研究者が説明し、残り半分の被験者は普通の服装の研究者が説明しました。
その結果、「DEATH」Tシャツを着た研究者から説明を受けた被験者の方が、シュートの成功率が30%高いという結果が得られました。
脅威管理理論
人間は動物と違って、自分の身に将来必ず「死」が訪れることを知っています。
この避けられない事実に対する恐怖や不安に対処するため、「自尊心」であったり「文化的価値観」を持つことで恐怖の感情を和らげているのだという。これを「脅威管理理論(terror-management theory)」と呼んでいます。
今回の実験で、被験者らはアンケートや視覚情報から「死」を意識させられました。
そのため、死に対する恐怖に対処するため、無意識に「自尊心」を高めようと「優れたアスリートになること」を求め、パフォーマンスが向上したという。
実はこのように、死をほのめかされると作業により熱心に取り組む人間の性質は、これまでも多くの研究から明らかになっているそうです。
ちょっと過激な方法ではありますが、「死に対する恐怖」を使うことで仕事やスポーツなどさまざまな分野でパフォーマンスを向上させる方法が、開発される可能性があります。
参考記事:WIRED・UANews