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歯周病とアルツハイマー病の関係が分子レベルで明らかに

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認知症のおよそ6割を占めるアルツハイマー。その原因はアミロイドベータと呼ばれる異常なタンパク質が脳内に蓄積することと言われていますが、名古屋市立大などの研究チームによって「歯周病」との関係が分子レベルで明らかにされました。これは世界初の発見です。




アルツハイマー病と歯周病との関係

アルツハイマー病を発症する原因として、アミロイドベータタンパク質の蓄積が知られています。このタンパク質は、もとはAPPと呼ばれるタンパク質が酵素によって切断されて断片化したものです。

アミノ酸が40個程度つながったペプチド断片ですが、このペプチドは高濃度で存在すると凝集する性質をもち、その結果「アミロイド線維」と呼ばれる水に溶けない物質を形成します。このアミロイド線維が脳内に蓄積することが、アルツハイマー病の原因とされています。

一方、これまでの疫学的な研究から認知症と歯周病の関係が指摘されてきました。しかし、その因果関係を解明するような分子レベルの研究結果は得られていないことから、詳細は不明です。

歯周病の治療がアルツハイマー病予防につながる可能性

そこで研究グループは、歯周病とアルツハイマー病との関係を解明するために、アミロイドベータの前駆体であるAPPタンパク質を過剰発現する「アルツハイマー病モデルマウス」を使った実験を行いました。

モデルマウスに歯周病菌を感染させて3カ月間飼育し、アミロイドベータの蓄積を調べました。

その結果、歯周病菌を感染させなかったマウスと比べて脳内のアミロイドベータの量が顕著に増えていることがわかりました。また、脳内の炎症分子(サイトカイン)の上昇も確認されています。

これは、歯周病という慢性の炎症が脳内にも拡がり、その結果としてアミロイドベータの脳内の量が増加したことを示しています。

さらに、歯周病を起こしたマウスでは有意に記憶学習能力が低下することも確認されています。

これらの結果から、歯周病の治療や口腔ケアがアルツハイマー病の発症を予防したり、あるいは進行を抑える効果が期待できます。

研究グループによると、現在は歯周病の治療など認知症患者に対する臨床介入試験も実施しており、その効果を検証中とのことです。