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大きな重力がかかるドラゴンボールの「精神と時の部屋」で実際に運動学習能力が高まることが判明する

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「ドラゴンボール」では、主人公の悟空が戦闘能力を高めるために通常の10倍も大きな重力を受ける重力室(精神と時の部屋)で修行をします。中央大学の研究グループは、実際に過重力環境をつくると運動学習能力が高まることを実験で確認しました。




実験では、遠心力を使った「過重力付加装置」を使いました。この装置のなかに入ると、通常の重力と遠心力が組み合わさることで2Gの重力加速度を対軸方向にかけることができます。

この過重力環境下において、視界がおよそ17度ずれるプリズムゴーグルを装着してタッチパネル上の赤い点(指標)を正確に指で差す訓練を行いました。

プリズムの効果によって指さし位置が左にずれてしまうため、最初はうまく差すことができませんが、何度も繰り返すことによってしだいに正確な位置を差せるようになります。

このような実験をした結果、通常の重力である1Gでは正確な指差しができるようになるまでおよそ60回かかりました。しかし過重力環境である2Gでは、その3分の1のおよそ20回で達成できるようになりました。

このような効果は、実験に参加した4名の被験者全員で確認されたとしています。

研究グループは、このような環境刺激が小脳におけるシナプス可塑性を促進しているのではないかと考えています。

シナプス可塑性とは脳における学習や記憶の基礎過程と考えられている現象。脳内の神経細胞はシナプスを介して信号のやりとりをしていますが、そのシナプスにおける信号伝達の効率が変化する現象のことです。

今回の実験からドラゴンボールに登場する重力室の効果が実際に得られることが確認されましたが、このような効果はアスリートに限らず一般の人が新たな運動能力を身につけるための効率的な練習環境を考える上でも参考になります。

とはいえ、過重力の運動施設を作り上げるには相当に大がかりな装置が必要となるので現実的ではありませんが。