ネコを飼っているひとにとってみれば、家族の一員でもあるネコが「自分の名前」をしっかりと認識しているなんて、当然のことと考えるかも知れません。しかし実際に自分の名前を憶えていて、そして呼ばれたときには自分のことと確実に認識できているかについては疑問に思うひともいるでしょう。
しかし安心してください。ネコたちはちゃんと自分の名前をほかのものとは区別して聞き分けているようです。
上智大学の研究グループは、この疑問について科学的にこたえるため、「馴化脱馴化法」と呼ばれる実験手法を用いて証明しています。
この手法は、言葉を話すことができない乳児や動物が、異なる複数の刺激について区別しているかどうかを調べるための実験方法のひとつです。
同じカテゴリーに含まれる刺激を繰り返し与えると、その刺激に対する反応が減少していきます(馴化)。次に、これらとは異なる新しい刺激を与えてあげると、反応が回復します(脱馴化)。もし前者との区別ができていなければ、反応が回復しないというわけです。
研究グループは、一般家庭で飼われているネコと、ネコカフェで飼われているネコについてそれぞれ実験しました。
まずはじめに、一般家庭で飼われているネコに対して、「一般名詞」または「同居のネコの名前」の4つの名前を続けざまに聞かせました。すると「馴れ」が生じて音声に対する反応が小さくなりました(馴化)。
次に、5つ目の刺激として「自分の名前」を聞かせたところ、馴れによって小さくなってしまったネコの反応が大きくなる(回復する)現象を確認することができました(脱馴化)。
このことから、ネコは「自分の名前」を一般名詞や同居のネコの名前とは区別して認識していることが明らかになりました。
これらの実験結果は、飼い主だけではなくて見知らぬひとが話した場合でも同様でした。つまり、飼い主の呼びかけに含まれている何らかの音声的な手がかりではなくて、明確に「名前」を聞き分けていることも示されました。
次に、ネコカフェで飼われているネコについても同様の実験を行いました。すると、「自分の名前」と「一般名詞」は区別しているという結果が得られましたが、「同居のネコの名前」については区別していないことがわかりました。
ネコを飼っているみなさん、安心してください。ネコたちはちゃんと「自分の名前」をわかって返事をしてくれているようですよ。