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外科医が自分の誕生日に手術を行うと患者の死亡率が高くなることが判明

外科医が自分の誕生日に手術を行ったばあい、患者の死亡率が高くなるという気になるデータが発表されています。これからは手術日が決定したときに執刀医の誕生日を確認する必要があるかもしれません。




そもそも手術のパフォーマンスは常に一定ではなく、たとえば5パーセントから10パーセントの患者は術後に死亡しており、そのうち2割から4割は回避可能であったとする研究結果もあるほどです。

外科医のパフォーマンスに与える影響としてはどのようなものがあるのでしょうか。たとえば着信音や医療機器のトラブル、手術とは関係のない会話など、手術中の外科医の注意をそらしてしまうような物事が多く存在しているといわれています。

そこで慶應義塾大学の研究グループは、外科医が誕生日には注意散漫になり、そして手術を早く終えようと急ぐことが原因となって、手術のパフォーマンスが低下するのではないかという仮説を立てて、これまでのデータを使って立証しようとしました。

アメリカの大規模医療データを使って、2011年から2014年に行われた47489人の外科医による980876件の緊急手術を分析し、外科医の誕生日に行われた手術かどうかで患者の死亡率が影響を受けるかどうかを調べました。

外科医の誕生日周辺における手術日と術後30日死亡率との関係(慶應義塾大学)

上のグラフは、誕生日の前後14日間における手術日と術後30日死亡率との関係を示しています。年齢や性別、手術の種類、併存疾患など患者の要因は補正してあります。

赤の横線は、このグラフに含まれる14日間以外の日に行われた手術の平均死亡率を示しています。

このように、外科医の誕生日に手術を受けた患者の死亡率は、誕生日以外の日に手術を受けた患者の死亡率よりも1.3%増加していることがわかりました。

このことは、外科医のパフォーマンスが仕事とは直接関係のないライフイベントに影響される可能性を示しています。結婚記念日など、誕生日以外でも外科医が注意散漫となりうる特別な日ではパフォーマンスが低下しているおそれがあります。

医師も自分の人生を生きているひとりの人間ですから、常に一定のパフォーマンスを維持できるわけではありません。この分析結果から、たとえば外科医の注意が散漫になりうる特別な日には手術日を避けるようなシステムづくりが必要なのかもしれません。