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目的地への道順をたどる際の「海馬」の活動を解明

 迷路において、ゴールまでの正しい経路を選ぶ際の脳の仕組みをラットの実験で解明したと、同志社大の高橋晋准教授らの研究グループが発表した。記憶の想起の仕組みの解明につながり、認知症などの治療への応用が期待できるという。

 脳内の「海馬」は記憶をつかさどるが、特に空間の特定の場所に反応する海馬の神経は「場所細胞」と呼ばれている。

 研究グループは、ラット4匹が迷路をたどる時の海馬の活動を計測した。ゴールまで正しくたどり着けるように訓練してから計測すると、一連の「場所細胞」が特定の順番で活性化することがわかった。また、分かれ道で迷ってから正しい道を選ぶ際は、迷わないときと比べて場所細胞が10倍の速度で順次活性化していたという。

 さらに、分かれ道の直前に5秒間「壁」が生じるなど、ゴールまでの出来事が違う場合には、反応する場所細胞の順番は同じでも活性の強さが異なることがわかった。

 実験結果について、高橋准教授は「迷って記憶を思い出すときに、10倍速でリプレイが行われている」と推測している。また、活動の強さの違いについては「それぞれの出来事への反応を意味している」とする。海馬が「いつ、どこで、どのように」という記憶を担うことを示しているという。

(via 京都新聞