バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 3.28 Thu

虐待が原因の「愛着障害」、報酬を喜ぶ機能低下 ドーパミン不足の可能性も

 虐待などが原因で母親らの愛着を感じられない「愛着障害」の子どもでは、特定の脳機能が低下していることを、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤センターなどの研究チームが解明した。愛着障害の診断や治療に役立つ可能性があるという。

 「愛着」は子どもと養育者との間でつくられる強い情緒的な結びつきで、虐待や養育放棄などを受けた子どもではうまく育たず「愛着障害」となる場合がある。愛着障害の子どもは自己肯定感が低く、褒め言葉のような「報酬」が心に響かない傾向があるという。

 研究グループは、愛着障害がある10~15歳の子ども5人、愛着障害と症状が似ているとされる注意欠陥多動性障害(ADHD)がある子ども17人、健康な子ども17人について、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使って脳の状態を調べた。

 実験では、3枚のカードから1枚を選び、金額が書かれていればその額がもらえるというゲームを行った。

 その結果、健康な子どもは報酬を喜ぶ感情や意欲・行動の制御に関わる線条体と視床下部が、報酬の額に関係なく活性化し、ADHDの子どもは報酬が多いときだけ活性化した。一方、愛着障害の子どもは金額が書かれていても活性化しなかった。

 報酬を喜ぶ脳機能は神経伝達物質「ドーパミン」が関係していることから、愛着障害の子どもはドーパミンが不足している可能性があるという。

 同センターの水野敬上級研究員は研究結果について、「愛着障害とADHDの鑑別診断にも活用できる可能性がある」としている。

(via 神戸新聞