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小型霊長類マーモセットで神経細胞の活動を計測する技術を開発

マーモセット大脳皮質神経細胞

 小型の霊長類「マーモセット」の大脳皮質における数百個の神経細胞について、長期間にわたり同時に活動を測定できる技術を開発したと、理化学研究所脳科学総合研究センターの山森哲雄チームリーダーらの研究チームが19日付の米科学誌「Cell Reports」で発表した。神経疾患のメカニズム解明や治療法開発などへの応用が期待される。

 マーモセットはヒトと共通する高度に発達した脳をもっており、小型で飼育が容易なためヒトの脳機能メカニズムを解明するモデル動物として注目されている。

 学習や運動などで脳神経細胞のネットワークが活動するとカルシウムイオン濃度が上がるため、カルシウムイオンと結合して蛍光を発するタンパク質を発現させれば顕微鏡で脳活動を測定することができる。

 この測定法は蛍光タンパク質を産生する遺伝子を組み込むことで実現でき、マウスで広く利用されているが、霊長類では遺伝子の働きが不十分で蛍光が弱く、測定が困難という問題があった。

 研究チームは、「テトラサイクリン発現誘導システム」と呼ばれる遺伝子発現システムを用いることで、細胞内の蛍光タンパク質の発現を増幅した。

 その結果、マーモセットの大脳皮質の触覚などを処理する体性感覚野で、数百個の神経細胞の活動を同時に計測することに成功した。

 同一の神経細胞を100日以上にわたって継続的に観察することも可能になり、微細な樹状突起や軸索の構造も画像化できるようになったという。

 今回開発した計測技術を使うことで、知覚や運動、認知など霊長類の脳機能における神経ネットワークの解明につながるという。

(via 時事通信 理化学研究所