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ラン藻を利用して含窒素化合物の生産に成功、環境負荷のないアンモニア生産システムの確立に期待

ラン藻を産業利用

 原核光合成生物である「ラン藻」を利用して産業的に有用な含窒素化合物を生産することに成功したと、東京工業大の久堀徹教授らの研究グループが科学誌「Plant and Cell Physiology」で発表した。環境に負荷をかけずにアンモニアなどを生産するシステムの確立につながる成果だという。

 ラン藻は光合成によって大気中の二酸化炭素から糖を生産するが、窒素を取り込んで窒素化合物に変換する種もいる。

 産業界で重要な窒素化合物はアンモニアで、世界では年間1億6千万トンが生産されている。この生産には水素を必要とするが、現在は化石燃料から水素が作られている。そこで、研究グループは窒素固定型のラン藻を利用した含窒素化合物の生産を目指した。

 窒素固定型の糸状性ラン藻「Anabaena sp. PCC7120(アナベナ)」は、窒素源の乏しい条件ではヘテロシストと呼ばれる特殊な細胞が形成され、大気中の窒素を直接アンモニアに変換する反応が行われる。

 アンモニアはその後、アミノ酸などに変換されて細胞内で利用されるため、研究グループは代謝系酵素の発現を調節するシステムを開発してアナベナに適用した。

 このシステムを使ってアナベナのグルタミン合成酵素遺伝子の発現を抑制することで、窒素固定条件下で含窒素化合物を生産させ、効率よく培地中に放出させることに成功した。

(via 東京工業大学