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マイクロRNAのわずかな活性差を感知して細胞の種類を同定する手法を開発

 細胞内のマイクロRNA活性を定量的に感知するmRNAを合成し、その活性差に基づいて異なる細胞の種類を高精度に同定することに成功したと、京都大iPS細胞研究所の齊藤博英教授らの研究グループが英科学誌「Scientific Reports」で発表した。

 細胞の機能解析や臨床応用のための細胞調製では、細胞の種類を正確に同定して分離する必要がある。従来の手法では、分離した細胞間にmiRNA活性の大きな差がない場合は利用することができなかった。

 研究グループは、蛍光タンパク質をコードする複数種類のmRNAをあらかじめ混合して細胞に導入すると、mRNAの混合比率に従って各タンパク質の発現比率が高い水準で維持されることを発見した。

 そこで、複数のmiRNAに応答してそれぞれ異なる蛍光タンパク質の発現が抑制される合成mRNAを細胞に導入することで、細胞間にわずかなmiRNAの違いしかない場合でも細胞の分離を可能にする手法を開発した。
 
 2倍以内というわずかなmiRNA活性の差に基づいて細胞の種類を同定することができる。

 理論的には、4種類のmRNAを用いて100種類の細胞を分離することができると考えられ、導入するmRNAの種類を増やすことでさらに多くの細胞集団を分離可能だという。

 この方法を用いることで、培養細胞の品質管理への応用や、細胞機能の詳細な解析、あるいは新規薬剤の探索効率や細胞療法の効果の向上に応用できると期待される。

(via 京都大学