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がん細胞の浸潤や転移に関わる「ブレブ」形成の分子メカニズムを解明

 がん細胞の浸潤や転移に関わる細胞膜の突起構造「ブレブ(Bleb)」の形成に関わる分子メカニズムを解明したと、九州大の池ノ内順一准教授らの研究グループが米科学アカデミー紀要で発表した。

 ヒトの悪性腫瘍の90%以上は上皮細胞に由来する。上皮細胞が悪性腫瘍になると、細胞接着が壊れて高い運動性を獲得して他の臓器に転移する。

 がん細胞が高い運動性を示す原因として、「ブレブ」と呼ばれる細胞膜の突出を使った移動方法が明らかになってきた。しかしブレブの形成に関する分子機構についてはあまりよくわかっていない。

 研究グループは、ヒト大腸がん由来培養上皮細胞DLD-1を使い、ブレブに特異的に集積する遺伝子の探索と機能解析を行った。

 その結果、ブレブが拡張する時期には低分子量Gタンパク質「Rnd3」が重要な働きをすること、逆にブレブが退縮する時期には別の低分子量Gタンパク質「RhoA」が働くことがわかった。

 ブレブの拡張期にはRnd3-p190RhoGAP経路が優位となりRhoAの活性化を抑え、ブレブの退縮期にはRhoA-ROCK経路が優位となってRnd3の活性化を抑える。Rnd3とRhoAが交互に優位になることで持続的な細胞運動に必要なブレブの形成と退縮のサイクルが成り立つという。

参考:九州大学