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「見て触れる」経験は脳の「視覚野」の反応を変化させる

 「見て触れる」経験をすることで、視覚の情報処理をつかさどる脳部位「視覚野」の視覚刺激への反応が変化することを発見したと、生理学研究所の小松英彦教授らの研究グループが科学誌「Current Biology」で発表した。

 物を見ただけでそれがどのような手触りをしているか判断できる能力は、過去に自らが経験した記憶が関与していると考えられる。しかし「見て触れる」という複数の感覚を伴う経験が脳のどの部位にどのような影響を与えるかはわかっていなかった。

 研究グループは、サルにさまざまな素材でできた棒状の物体を実際に見せて触れさせ、素材の見た目と手触りを経験させた。

 「見て触れる」経験をさせる前と後で、サルが各素材の写真を「見ている」時の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で計測した。

 その結果、脳の視覚野の下側頭皮質の活動が、「見て触れる」経験によって素材の外観や手触りの印象をよりよく反映した反応パターンを示すことがわかった。

 つまり、「見て触れる」経験後には、手触りに似た素材に対しては似たような反応を示し、手触りの違う素材に対しては異なったパターンの反応を示した。

 今回の結果から、視覚野がより高度な発達を遂げるためには視覚だけでなく、他の感覚の経験が非常に重要であることがわかった。

参考:生理学研究所