獲物を見たときの情報が摂食行動を引き起こす脳内の仕組みを解明したと、国立遺伝学研究所の研究グループが発表しました。
栄養状態にかかわらず、食べ物を見ると食べたくなる反射があることが知られています。
1950年代から「獲物検出器」という概念が提唱されていましたが、実際に獲物検出に特化した脳の領域が存在するかどうかは不明でした。
また、この反射が過去の接触経験から学んだ結果であるか、あるいは生まれた時から備わっている仕組みであるか、これまでわかっていませんでした。
研究グループは、ゼブラフィッシュの稚魚を使った実験で、接触経験がまったくない稚魚であってもエサによって視覚が刺激されたときに、脳内の特定の神経細胞集団を介して視床下部の接触中枢が活動することを確認しました。
すなわち、エサを見たときの情報を食欲に変換する神経回路は、生まれた時から脳内に存在しており、その回路の活動によって接触行動が引き起こされることがわかりました。
「食べもの」の視覚情報を「食べたい」という動機に結び付ける神経回路が発見されたことから、食欲を制御する仕組みの解明や摂食障害の治療法の開発につながると期待されます。