エヴァンゲリオンプロジェクト「ロンギヌスの槍を月に刺す」　国際問題にも発展しそうな理由とは？

人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のワンシーンを現実化しようというプロジェクトが話題になっています。１億円をかけた宇宙規模の計画ですが、いろいろと波紋を読んでいるようです。

１９９５年に公開されたテレビシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」の第弐十弐話。
「エヴァ零号機によって投げられたロンギヌスの槍は、地球を大きく飛び出し目標を貫き、やがて遥か月へと到達した。」

公開から２０年経過した今年は、なんと劇中と同じ西暦２０１５年。プロジェクトは、劇中のワンシーンを現実のものとしようと、つまり「ロンギヌスの槍」を月に刺すことを目的として企画されました。

計画では、アメリカから打ち上げられるロケットに搭載されたランダー（月着陸船）に「槍」を積みます。月に向かったロケットからランダーが月面に着陸、そしてランダーに搭載された「月面ペイロード放出機構」から槍を放出、内蔵カメラで槍が月面に刺さる様子を撮影します。

計画の実行には当然ですが費用が必要になります。重さ１グラムの物を月面まで輸送するためには約1200ドルかかるため、今回のプロジェクトではおよそ１億円は必要と見積もっています。資金は「クラウドファウンディング」で調達する計画です。現在までに３５００万円近くが集まっており、募集終了まで残り５４日。期日までに１億円が集まらなければ計画は失敗、それまでに集まった支援金は返金されます。

１月３０日には計画の発表会が開催されました。会場に入るとエヴァ初号機のフィギュアの隣に天井を突き破りそうなロンギヌスの槍が展示。「これを月面に突き刺すのか」と思ったひとも多かったと予想されますが、実は…

まあ、考えてみたら当然なのですが、全長２４０ミリメートルの槍だそうです。実際に月着陸船に乗せて放出装置で飛ばす必要があるため、大きなものでは実現不可能なわけですよね。エヴァ好きとして知られる加藤夏希さんもちょっと微妙な表情。

とはいえ、エヴァファンにとってはロマンあふれる企画です。また、支援者には金額に応じてイラストポスターやオリジナルTシャツ、描き下ろしイラスト複製原画など、さまざまな特典があるそうです。

すでに目標額の３割ほどが達成されており、期限までまだ２カ月近くあります。この調子で支援金が集まれば達成できそうです・・・で終わりたいところですが、どうやら問題が生じているようです。

実は「月に異物を刺すなんて」「ゴミを置きに行くとしか思えない」などの反対意見が出始めているようです。「全宇宙の共有財産を一部の人達だけの思いで汚さないでほしい」というコメントも寄せられています。

これに対して運営側は、

「ＳＮＳなどでそうした意見を目にしています。当然、そういったものもあると予測していました。しかし、『やってはいけない』という法律や規律は現状ではありません。許可を得るような団体なども存在していませんし。このまま進める予定です」（週プレNEWS）

とコメントしています。

ところが、さらに違った方面から批判を受けます。

　ロンギヌスの槍は、キリストの処刑に関わった兵士が、その死亡を確認するために使ったという、キリスト教の聖遺物です。月はイスラームの象徴でもあります。トルコの三日月と星の国旗はイスラームを象徴します。国際医療の赤十字社は、イスラーム圏では赤新月社として活動しています。「キリスト教がイスラム教を傷つけた・傷つける意思があることの表明」ともとらえかねられないことです。（文系宇宙工学研究所）

「ロンギヌスの槍」はそもそもキリスト教に結びついたもので、それを月に刺すという行為そのものが、宗教的な問題を引き起こすことになりかねないということです。

この記事が拡散され、ネットニュースなどでも取り上げられたところ、運営側も慎重になり、このようなコメントをしています。

「あくまで宗教は関係なくアニメコンテンツのなかのモノという認識で始めているものなのですが、現在、委員会でも検討しています。このまま続けるかどうかは現段階では明言できない」（週プレNEWS）

イスラム国などのテロ組織を刺激することも十分考えられる問題なだけに、アニメファンの夢を叶えるファンタジックなプロジェクトだけでは済まされない話になりつつあります。

支援金の募集期間は残り５４日。１億に到達できなければそのままプロジェクトは失敗に終わります。仮に集まったとしても、無事に遂行できるかどうかはわからなくなってきました。

参考：週プレNEWS