歯垢の中に潜む細菌によって引き起こされる「歯周病」。細菌によって歯肉に炎症が起きる歯の疾患として知られていますが、実はその影響は全身へと広がってしまうという。いったい、どのような疾患につながるのでしょうか。「歯周病のセルフチェック」も合わせてご紹介します。
歯周病のセルフチェック
歯周病は歯垢(プラーク)内の細菌が感染することで炎症が起きる疾患ですが、なりやすさに個人差があるようです。歯周病を進行させる因子としては、「歯垢がたまりやすい不均一な歯並び」「合っていない歯の詰め物やかぶせ物」「歯周組織に過度な力を負担させる噛み合わせ」「不規則な食習慣」「喫煙」「ストレス」などがあるといいます。
以下の項目をチェックしてみてください。歯周病の症状がわかります。
- 朝起きたとき、口の中がネバネバする。
- ブラッシング時に出血する。
- 口臭が気になる。
- 歯肉がむずがゆい、痛い。
- 歯肉が赤く腫れている。(健康的な歯肉はピンク色で引き締まっている)
- かたい物が噛みにくい。
- 歯が長くなったような気がする。
- 前歯が出っ歯になったり、歯と歯の間に隙間がでてきた。食物が挟まる。
参考:日本臨床歯周病学会
3つ当てはまる場合は、予防に努める必要があります。
6つ当てはまる場合は、歯周病が進行している可能性があります。
全て当てはまる場合は、症状がかなり進んでいます。
歯周病が影響する疾患
近年では、虫歯は減ってきているものの、歯並びの悪化や異常なかみ合わせなどが原因で、以前よりも歯周病になりやすくなっているそうです。そして歯周病菌が全身疾患に影響している点が問題視されてきています。
歯周病患者が心筋梗塞などの心疾患を起こす確率は2~3倍も高くなるといわれています。歯周病菌の刺激によって動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラークができ、血液の通り道が細くなります。
プラークがはがれて血の塊ができると、その場で血管が詰まったり、あるいは血管が細くなる場所まで塊が流れていき、詰まったりします。歯周病患者では、脳梗塞のなりやすさが2.8倍になるともいわれています。
歯周病は糖尿病とも関連があります。歯周病は糖尿病の合併症といわれてきましたが、最近では逆に、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという関係も明らかになってきています。
歯周病菌がつくる毒素によって、インスリンの働きを抑える物質が脂肪組織や肝臓から産生されるためです。歯周病の治療を行うことで糖尿病が改善することもわかってきています。
また、妊婦が歯周病にかかっている場合は、低体重児や早産のリスクが7倍にもなるといわれています。これは、歯周病菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するためではないかといわれています。
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歯周病の治療は、基本的には歯垢の除去や歯石の除去、歯のかみ合わせの調整などです。つまり、歯周病菌が増殖する環境を取り除く処置になります。結局のところ、毎日の歯磨きをしっかり行うことが大事ということですね。