人の顔を覚えるのがどうしても苦手な人がいる一方で、一度出会っただけの人の顔を確実に覚えてしまう人もいます。うまく覚える方法などもさまざまありますが、どうやら「顔の特徴を言葉にして覚える」というやり方は逆効果のようです。
言語隠蔽効果
「言語隠蔽効果」と呼ばれる現象が知られています。色や味覚、嗅覚など言語化しにくいものを、あえて言語で記述してしまうと記憶が歪んでしまう現象のことです。
どうやら言語隠蔽効果は人の顔を覚える際にもみられるようです。
名古屋大学大学院環境学研究科の北神慎司准教授によると、人の顔を覚えるときに顔の特徴を言葉にしてしまうことで記憶が歪む理由には、2つの仮説があるという。
2つのうち有力な説は「人の脳は目、鼻、口の位置関係などから顔全体を捉えて覚えるが、言葉にすることで部分のつながりが失われ、記憶が歪む」という説。
もう1つは「言葉が記憶を直接阻害する」というもの。
北神准教授らの研究グループは、仮説を検証する実験を行いました。
実験では、目や鼻、口の特徴だけで区別される顔を64種類つくりました。まず、そのうちの半分をコンピューター上の脳モデルに覚えさせます。その後に、残り半分も含めたすべての種類の顔を見せて、知っている顔かどうかを判断させます。
このとき、新たに見た顔の特徴を脳内で言葉にさせた場合、特徴の似た別の顔を思い出して「知っている」と誤って判断してしまうケースが増えたという。
研究グループは、実験によっていずれの仮説も裏付けられたとみています。
犯罪捜査では、目撃者に対して犯人の顔の特徴を証言させることがあります。もし証言のプロセスを誤ってしまうと、誤認逮捕などの問題が生じる原因にもなります。
たとえ特徴的な顔のパーツがあったとしても、特徴を言葉にして覚えたり、あるいは言葉で表現した特徴を使って思い出したりせず、「顔全体の印象」として捉えたほうが記憶を歪ませる危険がないようです。
(via http://www.jiji.com)