バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 5.4 Sat

上皮細胞が自発的に移動する仕組みを理論から解明

 上皮細胞がシートの形を保持したまま移動する仕組みを理論の立場から明らかにしたと、北海道大学電子科学研究所の佐藤勝彦准教授らの研究グループが科学誌「Physical Review Letters」で発表した。多細胞生物の複雑な形態形成の解明につながるという。

 多細胞生物が細胞分裂を繰り返して形を形成している過程では、上皮細胞が折れ曲がったり、伸びたり、移動することができる。

 これまで、細胞シートが自発的に折れ曲がることや伸びることは解明されているが、細胞が隣の細胞と接着を保ったまま自発的に移動できる仕組みは解明されていなかった。

 研究グループは、細胞にどのような性質があると、ある決められた方向に移動することができるかの条件を求めた。その結果、細胞に体の主軸に対して斜めの極性があると、一方向に動きうることがわかった。

 次に、頂点モデルと呼ばれる数理モデルを使って細胞シートを表現して、細胞の斜めの極性を導入したところ、細胞同士の接着を保ったまま細胞の位置を変え続けることができることが示された。

 さらに、動いている方向と垂直な方向に、例えば接着度合いの強さなどの特徴を変えると、細胞シート全体が一団となって一方向に動けることも示された。

(via 北海道大学