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狙った臓器で金属触媒反応、体内で薬を直接合成に期待

狙った臓器で金属触媒による有機反応を起こすことにマウスの実験で成功したと、理化学研究所の研究グループが科学誌「Angewandte Chemie International Edition」で発表しました。がんなどの疾患部位で薬などを直接合成することが可能になると期待されます。




薬など多様な分子を合成する金属触媒がこれまでに開発されています。しかし金属触媒反応は一般的に、無水で反応を妨げる分子が存在しない環境で行われるため、体内で反応させるのは困難でした。

研究グループは、糖鎖クラスターを「金触媒」の運び屋として利用することで、狙った臓器で選択的に反応を行うことを目指しました。

末端にシアル酸やガラクトースをもつ糖鎖クラスターに金触媒を結合した「金の運び屋」を合成し、マウスに静脈注射しました。すると金触媒は30分以内に肝臓や腸管表面に植え付けられました。

次に、蛍光基をもつプロパルギルエステルを静脈注射したところ、血液中を通って肝臓や腸管に到達し、金触媒と反応して臓器表面にあるアミノ基と金触媒アミド化反応を起こすことが確認されました。

この方法を用いることで、特定の臓器で金属触媒反応を起こすことが可能になるため、がんなどの疾患部位で薬などの生理活性分子を直接合成することができます。