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嘔吐ロボットをつかってノロウイルスが拡散する様子を研究

ウイルス

 冬場に多い感染症というとインフルエンザが思い浮かびますが、ノロウイルスも忘れてはならない食中毒の原因ウイルスです。ノロウイルスの感染経路でもっとも多いのは感染者の嘔吐物を介した経口感染ですが、「嘔吐ロボット」なるものをつくってノロウイルスが広がる仕組みを研究しているグループがあるそうです。




嘔吐ロボット

 この異様な装置を作製したのは、米ノースカロライナ州立大の研究グループ。人間のおよそ4分の1スケールで再現されたロボットの口の部分から突き出たチューブから、嘔吐物に模したエアロゾル化した「プリン」を吹き出すのだという。

 わりとザックリとつくられた顔部分の印象に比べて、嘔吐物の量や濃度、圧力を正確にコントロールできるなど、かなり精巧な装置とのこと。

嘔吐ロボの全景

 装置は消化器官の上部を模した小型モデルになっていて、唾液の模擬物と偽の嘔吐物(プリン)、そしてウイルスを混合したものを使用しています。

 食道の役割を果たすチューブが胃を模した加圧室につながっており、機械が「混合物」を加圧室に送り込むと、エアロゾル化した粒子がチューブの先から吹き出す仕組みになっています。

 さすがに本物のノロウイルスは使っていませんが、人間には無害なバクテリオファージを使用しています。

 研究グループは、この嘔吐ロボットをつかってエアロゾル化した人間の嘔吐物を通してノロウイルスがどのように広まるかをテストしているという。

 8月19日付の米オンライン科学誌「PLOS ONE」で発表された論文によると、1回の嘔吐で、最大1万3000個のウイルス粒子がエアロゾル化されたという。

嘔吐の様子

ノロウイルスが人間に感染して発症するには、20~1300個のウイルスがあれば十分とされています。たとえ嘔吐物に触れなくとも、空気を通して感染するリスクが十分にあると結論しています。

 研究グループは今後、この装置を使ってウイルスが生き延びる期間やどのくらい空気中を移動するかを調べるそうです。

 米国では毎年ノロウイルスによる食中毒が2000万件も発生しており、感染者は人口の約1割にものぼるそうです。

 日本でも、ノロウイルスを原因とする食中毒の患者数は、第1位となっています。冬の季節、公共のトイレなどで他人の嘔吐物を見かけたら要注意です。不用意に近づいたり触れたりはしないようがよさそうです(もちろん、そんな人はいないとは思いますが・・・)。

(via WIRED TOCANA image:Virus by Yuri Samoilov)