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犯罪現場にいた個人を特定できるかも知れない?「微生物雲」とはいったい何か

微生物雲

 犯罪捜査では、指紋や声紋、遺伝子などが個人を特定できる固有のパターンとして使用されています。最近では瞳の中の虹彩や指の血管の形、顔形なども固有のものとして生体認証などに利用されていますが、新たに「微生物雲(microbial cloud)」と呼ばれるものが固有パターンとして報告されています。




 人間の体内には無数の細菌が存在しており、「細菌叢」と呼ばれる集合体を形成しています。腸内細菌をはじめ、口の中や体表にも形成されていますが、実はこの細菌叢は数百万個という微生物を周囲の空気中に放出しているのだそうです。

 そして、空気中に放出された微生物の集合体「微生物雲(microbial cloud)」には、個人に特有のパターンが存在するというのです。

微生物雲の実験

 オレゴン大学の研究チームが「微生物雲」について実験をしています。

 被験者11人にタンクトップとショーツだけという状態になってもらい、消毒された実験棟の中で一定時間、過ごします。その後、その室内の空気中に存在する微生物を採取して分析し、どのような微生物の分布になっているかという「微生物雲」のデータを収集しました。

 その結果、1時間あたり100万個の微生物が1人の人間から放出されており、実験開始から4時間で被験者を特定できるほど、特徴のあるパターンを確認できるほどになったという。

 検出された微生物の種類は、連鎖球菌やプロピオン酸菌属、コリネバクテリウム属に含まれるものだったそうです。

微生物雲の研究

Humans differ in their personal microbial cloud
Your ‘Microbial Cloud’ Is Like a Floating, Invisible Fingerprint

 研究チームは今後、時間とともにどのように微生物雲が変わっていくのか、あるいは残留するのかを調べ、また複数の人間が同じ空間にいた場合はどうなるかなども研究していくそうです。

 もしこの分野の研究が進めば、例えば犯罪が行われた現場の空気から微生物雲のパターンを分析して、いつ誰がどのくらい、その現場にいたかを確認できるようになる可能性があります。そうなると、指紋を拭き取る程度のことでは現場から証拠を完全に消し去ることはできなくなるかも知れませんね。

(via GIGAZINE