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精子と卵子の膜融合の新たな分子メカニズムを発見 不妊治療や避妊薬開発に期待

IZUMO1

 哺乳類の受精における精子と卵子の膜融合の新たな分子メカニズムを発見したと、福島医大の井上直和准教授らの研究グループが16日付の英科学誌「Nature Communications」で発表した。新しい不妊治療法や避妊薬の開発につながる成果だという。

 精子と卵子の膜融合反応は一瞬であるため、これまで膜融合前の分子メカニズムの解明は困難だった。そこで研究グループは、精子の代わりに細胞を用いたモデル実験系を利用して解析を行った。

 解析の結果、精子と卵子が受精する際に精子のタンパク質「IZUMO1」は卵子の受容体タンパク質「JUNO」を特異的に認識して結合し、速やかに二量体を形成することがわかった。また、二量体となったIZUMO1はJUNOを認識しなくなり、別の受容体と結合するという。

 研究グループによると、IZUMO1はJUNOを認識した後で二量体に構造を変化させて結合するパートナーを変え、互いの細胞膜同士の距離を物理的に近づけることで脂質二重膜の斥力を崩壊させる働きがあるという。

 一方、IZUMO1のみからなる発現系では膜融合が生じないことから、これにはさらに別の分子メカニズムが存在すると考えられるとしている。

 井上准教授によると、「精子が卵子をどう選ぶのか」など受精のメカニズムを解析して、受精を成功させる確率の高い精子を見つける不妊治療や、精子の動きを抑制して避妊する方法などにつながる可能性があるという。

(via 福島医大