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胃がんや前立腺がんで発現異常となる「転写超保存領域」を発見

転写超保存領域で発現異常

 タンパク質に翻訳されない、保存性の高い転写領域「T-UCR」の中で、胃がんや前立腺がんで発現が異常になる特定の領域を発見したと、広島大の安井弥教授らの研究グループが英科学誌「Oncogene」で発表した。新しい治療法や診断法の開発につながる可能性がある。

 T-UCR(転写超保存領域)は、ヒトやマウス、ラットなど生物種を超えて100%の配列保存がみられる非翻訳領域で、タンパク質に翻訳されることはないが生物の発生や分化と関連があると指摘されている。近年、いくつかのT-UCRはがん細胞で発現が変化していることが報告されている。

 研究グループは、胃がんや前立腺がんで発現に異常がみられるT-UCRを定量的RT-PCR法を用いて同定した。

 配列を詳しく調べたところ、がん細胞で発現が低下する「Uc.158+A」は過剰なDNAメチル化を受けており、実験的にメチル化を抑えたところ発現が回復することがわかった。

 一方、がん細胞で発現が上昇する「Uc.416+A」について調べたところ、「miR-153」と呼ばれるマイクロRNAの発現を調節すると「Uc.416+A」の発現が変化することが胃がん細胞株での実験で明らかになった。また、「Uc.416+A」の発現を抑えるとがん細胞の増殖が抑制されることもわかった。

 今回の研究から、「Uc.416+A」を標的としてがんの増殖を抑制する治療法への応用が期待されること、また血液中に含まれるT-UCRを検出してがんを発見できる可能性があるとしている。

(via 広島大学