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「布」による細胞培養基材「ファイバー・オン・ファイバー」を開発、ヒトES細胞やiPS細胞の大量培養に期待

世界で初めて「布」による細胞培養法を開発したと、京都大やグンゼの研究チームが科学誌「バイオマテリアルズ」で発表しました。ES細胞やiPS細胞を効率的に大量培養することが可能だとしています。




ES細胞やiPS細胞を治療目的に培養するには、大量の細胞が必要になってきます。これまで、細胞を培地中に浮遊させる方法などが開発されています。しかし、培地を撹拌するときの細胞凝集やストレスで品質低下が起こったり、細胞数が減少する問題がありました。

研究チームは、これまでにナノファイバーを細胞の足場として使った培養法を開発してきました。体内においても、細胞の足場としてナノファイバー状の構造をもっており、細胞の増殖や機能が制御されています。

これまでにゼラチンを使ったナノファイバーによるES細胞やiPS細胞の培養に成功していましたが、壊れやすいため大量培養には適さないという課題がありました。

そこで、研究チームは、ゼラチンナノファイバーの下に丈夫なマイクロファイバーを置く階層状の基材「ファイバー・オン・ファイバー」を開発しました。

このファイバー・オン・ファイバーは、細胞を培養したままピンセットで折り曲げできる「布」のような培養基材です。

従来のようなフラスコではなくガス透過性をもった細胞培養バックで静置培養できるため、細胞へのストレスを軽減することが可能で、培養液の交換回数も少なくすむというメリットがあります。