うつ病における「気分の落ち込み」の原因のひとつとして、体内で起きている「炎症」が関係している可能性があるとする研究結果が報告されています。脳内の「意欲」や「報酬」に関連する部位に影響を与えているのだという。
米エモリー大学の研究グループは、うつ病患者を対象とした研究で、被験者の約3分の1において血中の炎症マーカー「C反応性タンパク質(CRP)」の濃度が高いことがわかったと、科学誌「Molecular Psychiatry」で発表しています。
CRPは肝臓で発現するタンパク質で、組織の損傷や感染などが発生してから数時間以内に血中に分泌されます。高濃度のCRPが脳内の「腹内側前頭前野」と「腹側線条体」という2つの領域の間の交信障害と関係していたという。
これら2つの領域は、「意欲」と「報酬」に関連しています。
研究グループは、喜びを感じることができない「無快感症(アンヘドニア)」などの抑うつ状態と関係する可能性があるとしています。
一方、うつ病患者に炎症分子を発見したとする50以上の臨床研究についてメタ分析をしたところ、これらの各研究の間に一貫性が乏しいと、科学誌「Brain, Behavior, and Immunity」は判断したそうです。
炎症がうつ病の症状に与える影響が存在する可能性も否定できないが、まだはっきりとしたことは言えない段階のようです。