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おばあちゃんの知恵「ハチミツが口内炎に効く」は本当だった!その科学的根拠とは?

いつの間にか口の中に発生して激痛をともなう「口内炎」。手足にできた傷であれば絆創膏を貼ることができますが、口の中だとそうもいかず、ただただ治るのを待つだけの憂鬱な日々を過ごすことになります。しかし、どうやらハチミツを塗っておけば口内炎が治りやすいらしい。これは本当なのでしょうか。そして、科学的根拠はあるのでしょうか。




口内炎ができる原因は何か

まず、口内炎はどうしてできるのでしょうか。口の中は外部と常に触れているためにウイルスや細菌が入り込みやすく、また食べものの残りかすがたまることで繁殖しやすい環境にあります。

通常であれば粘膜で覆われているために細菌などの侵入から守られていますが、例えばストレスや疲れ、睡眠不足、そして栄養不足などが原因で免疫力が落ちると、細菌に侵入されて炎症を起こしてしまいます。

また、例えば食事中に誤ってほおの内側を噛んでしまったりするなどして、物理的に口の中を傷つけてしまうことも原因になります。

ハチミツの効能

口内炎には「ハチミツ」がよく効くと言われていますが、いったいなぜ口内炎の治療に効果があるのでしょうか。

殺菌効果

ハチミツにはさまざまな成分が含まれていますが、どうやら口内炎の治療に重要な成分は「糖分」「ビタミン」「ミネラル」のようです。

ハチミツに含まれている糖分は砂糖とは異なり、糖分子が1つで構成される「果糖」と「ブドウ糖」です。高濃度でこれらの糖分を含むハチミツは、細菌から水分を奪う脱水効果があります。そのため、ハチミツを患部に塗ると細菌の増殖を抑制してくれるのだという。

また、ハチミツにはグルコースを分解してグルコン酸を発生させる酵素「グルコースオキシダーゼ」が含まれています。この反応の過程で生じる「過酸化水素」もまた、殺菌作用があります。

バリヤー効果

高濃度の糖分が含まれているため、ハチミツは高い粘性を持ちます。そのため、ハチミツを患部に塗ると膜を張った状態になるため、外部からの刺激から守ってくれます。これは手足の傷に貼る絆創膏のような役割ですね。

豊富な栄養分

ハチミツには、さらに豊富なビタミンやミネラル成分が含まれています。とくにビタミンB2は口内炎に効果があるとされいますが、これは皮膚や粘膜の成長を促す働きがあるためだという。

ハチミツを塗って患部の細菌増殖を抑えながら必要なビタミン類などを補給できる、まさに「一石二鳥」ということになりますね。

ハチミツの効果を証明した実験結果

このように、ハチミツが口内炎に効果がある理由についてはいくつか説明することができます。しかし、はたして本当にハチミツは「効く」のでしょうか。これについては、海外の研究者が実際に実験を行って確認しています。

サウジアラビアのサルマン・ビン・アブドゥルアジーズ大学の研究グループは、不幸にも口内炎を発症してしまった患者94人をハチミツを使って有効性を実証しました。

患者を3つのグループに分け、それぞれ「ステロイド系軟膏」「口内炎パッチ」「ハチミツ」を使って治療を行いました。

その結果、軟膏やパッチなどの薬で治療した患者では、口内炎の痛みが軽くなるまでに3~5日かかったのに対し、ハチミツを使った患者グループではわずか1日しかかからなかったそうです。

さらに、ハチミツを使ったグループのほうが口内炎が小さくなるのが早く、さらに炎症が治まる期間も短いことがわかりました。

(参考:Efficacy of honey in comparison to topical corticosteroid for treatment of recurrent minor aphthous ulceration: A randomized, blind, controlled, parallel, double-center clinical trial

このように、ハチミツが口内炎の治療に効果があるかどうかは実験でも確認されているわけです。

ハチミツの使用方法

それでは、どのようにハチミツを使えば効果的に口内炎を治すことができるのでしょうか。

綿棒を使って塗る

ハチミツを患部に塗るには「綿棒」が使いやすいようです。

口内炎は細菌が繁殖することで悪化してしまいますので、塗る前にはまず歯磨きをして口の中を清潔な状態にします。(もちろん、歯ブラシで患部を傷つけないように注意が必要ですね)

患部に唾液がたまった状態だとハチミツの浸透力が弱まります。そこで、まずは軽く湿らせた綿棒を使って患部をきれいに拭き取ります。ゴシゴシとこすって拷問のような痛みをこらえる必要はありません。優しく押し当てて拭き取る程度です。

患部をきれいにしたら、ハチミツを塗っていきます。綿棒の先を使って、たっぷりとハチミツを患部に塗っていきます。患部の周辺にも塗っておきます。

いつハチミツを塗ればよいのか

効果的にハチミツで口内炎を抑えるには、塗るタイミングが大事です。せっかくハチミツを塗っても、その後で食事をしてしまっては効果がなくなってしまいます。

必ず、食事が終わった後で塗るようにしましょう。

さらに、寝る直前に歯磨き後に塗り込むと睡眠中に浸透するため効果的です。特に寝ている間は細菌などが繁殖しやすいため、口内炎を早く治すためにはこのタイミングでハチミツを塗るのがおすすめです。

* * *

いかがでしたでしょうか。どうやら「ハチミツが口内炎に効く」というおばあちゃんの知恵は本当のようです。実験でも証明されており、また殺菌効果やビタミン補給など、実際に科学的な根拠があることがわかっているようです。

いつの間にかできてジワジワと痛みを訴え続ける口内炎も、ハチミツを使っておいしく(?)治すのがおすすめです。