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筋変性疾患「ジスフェルリン異常症」の原因となる遺伝子群を解明

ジスフェルリン異常症の原因遺伝子群

 筋力の低下や筋肉の萎縮が生じる遺伝性ミオパチーの1種「ジスフェルリン異常症」を引き起こす遺伝子群を次世代シークエンサーで明らかにしたと、東北大の青木正志教授らの研究グループが米科学誌「Neurology Genetics」で発表した。遺伝性筋疾患の病態解明や新しい治療法につながると期待される。

 ミオパチーは症状の進行とともに筋力低下や筋肉の萎縮が生じる筋疾患。ジスフェルリンは筋細胞膜の修復で重要な役割を担うタンパク質で、ジスフェルリン異常症の患者では筋細胞膜でこのタンパク質が発現していないことから、筋細胞の炎症や変性が生じると考えられている。

 研究グループは、ジスフェルリン異常症の患者を対象に次世代シークエンサーで筋疾患との関連が知られている42遺伝子の配列決定を行い、原因遺伝子を探索した。

 その結果、骨格筋組織でジスフェルリンタンパク質の発現が低下している患者90名のうち、70%にDYSF遺伝子、10%にCAPN3遺伝子、5%に他の遺伝子(ANO5など)に変異が確認された。

 今回の研究から、ジスフェルリン異常症を引き起こす具体的な遺伝子背景が明らかとなったことから、将来的にはジスフェルリンの機能と密接に関連する分子が明らかとなり、筋細胞膜の修復障害の病的機序が解明される可能性がある。

(via 東北大学