脂質メディエーターである「リゾフォスファチジンン酸(LPA)」が腎明細胞がんの主な悪性度促進因子であると、北海道大の佐邊壽孝教授らの研究グループが英科学誌「Nature Communications」で発表した。
腎がんの70から80%を占める「腎明細胞がん」は、抗がん剤や放射線療法に対して抵抗性が高く、その30~40%は転移性再発をみる悪性度の高いがんである。このがんは上皮組織に由来するが、転移性の高くなったものは浸潤能を獲得した間充織様形質にする。
LPAはこれまで、Rho活性を介してがん悪性度に関与すると考えられてきたが、腎明細胞がんではArf6と呼ばれる別の低分子量Gタンパク質を活性化して、浸潤転移や薬剤耐性を促進することを突き止めた。
また、Arf6が作動させる細胞内シグナル経路は、非転移性がんには発現しない間充織特異的タンパク質を含むものであることがわかった。
これらArf6経路因子群の高発現は、患者の予後不良と強い相関があり、腎明細胞がんの悪性度や薬剤耐性を診断するためのバイオマーカーとなることも明らかになった。
(via 北海道大学)