たばこを吸う習慣がなくても、男性の場合は受動喫煙だけで「歯周病」を発症するリスクが高まるとする調査結果が発表されています。なぜ女性は影響を受けないのでしょうか。
調査研究
国立がん研究センターの研究グループは、1990年に秋田県横手保健所管内に住んでいた40~59歳の男女1164人(男性552人、女性612人)を対象とした調査を実施しました。2005~2006年に歯科医院で歯科検診を行い、受動喫煙と歯の健康との関係について調べました。
上のグラフは男性における、喫煙または受動喫煙の状況と重度歯周病リスクの関係を示します。「重度の歯周病」は、6ミリ以上の歯周ポケットが1つ以上ある場合と定義しています。
喫煙者の歯周病リスクは、受動喫煙もない非喫煙者と比べて約3.3倍になることがわかりました。
興味深いのは、非喫煙者であっても家庭で受動喫煙がある場合はリスクが約3.14倍となり、喫煙者とさほど変わらないリスクがあることが明らかになりました。さらに家庭以外にも受動喫煙がある場合は約3.61倍に高まります。
喫煙と肺がんとの関係については広く一般的に知られていますが、歯周病との関係も近年では注目されています。たばこに含まれるニコチンは、歯周病の原因となる細菌(歯周病菌)の発育を促進し、病原性を高めるためです。
喫煙は免疫力を低下させて歯を支える組織の破壊を助長するため、歯周病菌に感染しやすくなります。受動喫煙についても同様のメカニズムで歯周病リスクが高まる可能性があるとのことです。
女性についてはどうか
さて、女性についてはどうでしょうか。
上のグラフは、同様に女性における喫煙や受動喫煙と重度歯周病リスクとの関係です。
喫煙者の歯周病リスクが非喫煙者と比べて約1.98倍と高いことは、男性と同様です。ところが、受動喫煙については男性のようなリスクの上昇が見られません。いや、むしろリスクが減少しています。いったいなぜなのでしょうか。
同センターの研究グループは、その理由について「不明」としています。ただし、「女性は男性よりもたばこをがんの原因ととらえている割合が多いという報告から推測すると、女性は家族の中に喫煙者がいたとしてもたばこの煙を避けたため」という推察をしています。
つまり、家族に喫煙者がいたとしても意識的に受動喫煙しないように心がけていた可能性があるわけです。もし喫煙者が近くにいても、実際に受動喫煙をしていなければ影響はないわけですね。
さらに、女性は男性よりもはやくニコチンを排出するという報告もあり、男性よりもたばこの影響を受けにくい可能性があるそうです。医学的な理由についての詳細は、今後の研究が待たれます。
(via 国立がん研究センター image by Gianni Dominici)