記憶力が良くなって困ることはありません。世の中には記憶に良い食べものや簡単に単語が覚えられる記憶術など、さまざまな記憶に関する情報がありますが、なんと脳に「チップ」を埋め込んで記憶力を高める方法までもが開発されているという。いったいどういう仕組みなのでしょうか。
記憶力を高めるチップの開発をしているのは、南カリフォルニア大学のセオドア・バーガー博士。脳に直接埋め込むタイプのチップで、サルやマウスではすでに効果が確認されているという。
記憶力を高めるということは、なにか「メモリーチップ」のような記憶媒体を使って大容量化するような技術を連想しますが、どうやらそういったものとは違うようです。
短期記憶と長期記憶
「記憶」とは、ものごとを忘れずに覚えておくことをいいます。それは過去に起こった出来事であったり、あるいは人の顔や名前、匂いや手触り、音なども含まれてきます。
記憶には短期記憶と長期記憶があることはよく知られています。少し前に見聞きしたことや行動など、短い時間だけ覚えているのが短期記憶で、より長い期間にわたって覚えている記憶が長期記憶です。
しかし正直なところ、どこまでが短期記憶でどこからが長期記憶なのかはっきりとはわかりませんよね。
ところが、どうやら脳の機能においては、短期記憶と長期記憶では記憶のメカニズムが異なっているようです。
ものごとを覚えようとするとき、その情報はいったん「短期記憶」として処理されます。しかしその後、脳は数ある情報を重要度の大きさで分類し、より覚えておかなければならない情報だけを「長期記憶」として保存するわけです。
そしてバーガー博士が開発する「ブレインチップ」は、脳をだまして「短期記憶を長期記憶に強制的に変換する」ことが可能なのだという。
ブレインチップ
情報が短期記憶から長期記憶へと変換される際、記憶をつかさどる脳の部位である「海馬」の一部では、ある特定のパターンの電流が発生することがわかっています。
ブレインチップは、この電流パターンを発生させることで脳をだまし、短期記憶を長期記憶に変えることで記憶をより強固なものにするのだという。
現在、ブレインチップは医療目的での応用が進められています。例えばアルツハイマー病の患者など、記憶障害のある人の記憶補助機器としての活用が期待されています。
将来、埋め込み式ではなく外部から脳に刺激を与える装置として使えるように改良が加えられ、刺激の直前に覚えた知識を簡単に強固な長期記憶として保存できるようになれば…。
需要はかなりありそうですが、使用頻度があまり多くならないように注意する必要がありそうですね。
参考:TOCANA・IEEE