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「GTPセンサー」を世界で初めて発見、がんの増殖にも関与

GTPセンサー

 細胞内のエネルギー物質「GTP」の濃度を検知するセンサーを世界で初めて発見したと、高エネルギー加速器研究機構、シンシナティー大学、産業技術総合研究所の研究チームが米科学誌「Molecular Cell」で発表した。がんや代謝疾患の治療法開発につながるという。

 タンパク質合成やシグナル伝達の原動力となるGTPの濃度を正しく保つことは、細胞機能の維持に不可欠。

 研究チームは、GTPセンサーを解明するためにGTPに結合するタンパク質を細胞内から探索した。その結果、脂質キナーゼの一種「PI5P4Kβ」タンパク質がGTPに強く結合し、GTPセンサーとして機能することを発見した。

 また、PI5P4KβとGTPの複合体の立体構造に基づき、センサー機能をもたないPI5P4Kβを人工的に作製した。この変異体を細胞内に戻したところ、細胞がGTP濃度の変化に正しく応答できなくなることも確認した。

 さらに、GTPセンサー機能をもたないPI5P4Kβを発現するがん細胞は増殖せず、腫瘍を形成しないことも明らかにした。

 がん細胞や代謝疾患ではGTP濃度が非常に高くなるなど、GTPを含む細胞のエネルギー制御が破綻することが知られている。

 今回の研究結果は、がんや代謝疾患での細胞エネルギー制御が破綻する仕組みの解明や、治療法の開発につながることが期待される。

(via 産総研