なるべく効率的に筋力をアップするためにはどのようにトレーニングを行えばよいのか。トレーニングジムや書籍、あるいはネットメディアなどでさまざまな情報が手に入りますが、トレーニングの「セット数」は注目される話題のひとつです。
はたして本当に3セットする必要があるのか
筋肉に与える負荷の大きさや回数、トレーニングを実施する日数などでさまざまな方法が提案されていますが、1日に行うトレーニングのセット数については、おおむね「3回」が推奨されているケースが多いです。
ところが、実際に3セットを行うトレーニング方法が最も効率がよいとされる明確な実験結果は報告されていないのが実情です。
では、いったい何セット行うのが最も効果が上がるトレーニング方法なのでしょうか。
このことについて、海外のある研究グループが学生を対象に実験を行っています。
効果的なトレーニング方法を明らかにする実験
研究グループは、数十人の健康な学生を対象として、一般的な7種類のトレーニング種目を行ったときのトレーニング成果を測定する実験を行いました。種目としては、ベンチプレスやマシンを使ったレッグプレスなど、ごく一般的なものです。
トレーニングは、十分な負荷をかけて「もうこれ以上はできない」ところまで行う8回から12回を1セットとします。
被験者を3つのグループに分けて、1セットしか行わないグループ、3セットをこなすグループ、そして5セットも実施するグループとします。セット間はおよそ90秒の休憩をはさむこととします。
このようにして、週あたり3回のトレーニングを8週間にわたって続けました。トレーニングの結果、いったいどのグループが最も筋力を向上させることができたのでしょうか。やはり、一番回数が多かった5セットのグループだったのでしょうか。
トレーニング効果が高いセット数とは
被験者となった数十人の学生の筋力と筋肉量(筋体積)、そして筋持久力について、それぞれ測定して、どのグループが最も効果的にトレーニングの成果を得られたかを比較しました。
その結果、筋肉量についてはやはりセット数が多いグループの方がより大きく向上させることができました。
しかし、なんと驚くべきことに、筋力と筋持久力についてはいずれのグループでも同じレベルであることが明らかになりました。
つまり、筋力をアップしたいだけであれば、よく言われているように3セット行う必要はなく、わずか1セットだけでも効果を上げることができるというわけです。
一般的には、筋肉量と筋力とは比例するものだと考えられています。しかし、今回の実験結果からは、筋肉が生み出すパワーの大きさには、筋肉量とは別の要因が大きく影響することも示しています。
筋肉量を効果的に増やすためには、やはり1日あたりのトレーニングのセット数は多いほうがよいようです。しかしながら、少なくとも2か月間の筋肉トレーニングでいえば、筋力をアップするためには1セットでも十分であると言えそうです。
筋力は筋肉の収縮力と言い換えることができますが、この「筋収縮」を発生させるためには、脳から運動神経を経由して筋肉に指令を出す必要があります。最大筋力の大きさを向上させるためには筋肉量のみならず、この筋収縮を生み出すプロセスもまた向上させることが重要なのかも知れません。
そしてこのプロセスを効果的に向上させるためみは、セット数は関係がない可能性があります。ただし、効果を得るためには1セットで「もうこれ以上はできない」という筋肉の限界に達するまでの負荷と回数が必要です。
また、筋肉量を増やして「筋力を向上させるためのポテンシャル」を上げるためには、やはりより多くのセット数を行うほうがよいことは、この実験結果からも言えることは、注意が必要です。