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水深1万メートル深海生物の酵素タンパク質、耐圧性のメカニズムを解明

 絶対好圧菌のタンパク質が推進1万メートルの水圧(1000気圧)でも機能を失わない耐圧性のメカニズムを解明したと、名古屋大や立教大などの研究チームが科学誌「Extremophiles」で発表した。意外なことに、わずか1つのアミノ酸の違いで耐圧性を獲得していたことがわかった。

 深海の高水圧に耐えて生育する生物は、耐圧性タンパク質をもつことが知られているが、タンパク質の圧力耐性のメカニズムについては分かっていなかった。

 イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(IPMDH)はロイシンの生合成過程で働く酵素で、米オナイダ湖に生息する常圧菌「シュワネラオネイデンシス」と絶対好圧菌「シュワネラベンティカ」ではアミノ酸配列や立体構造はほとんど同じである。

 しかし前者は1000気圧では活性が70%まで減少するが後者では95%以上の活性を維持することができる。

 研究チームは、常圧菌のIPMDHについて高圧装置を用いてX線構造解析を行った。その結果、圧力によってIPMDHの活性部位の裏側に水分子がクサビのように割り込んで行く様子を発見した。その水分子の場所を比較すると、常圧菌ではセリンだが絶対好圧菌ではアラニンに変わっていた。

 そこで、常圧菌のIPMDHのセリンをアラニンに置換したところ、深海生物並の耐圧性を獲得することがわかった。

 逆に、絶対好圧菌のアラニンをセリンに置換したところ、耐圧を失うことが確認された。

 これまで、深海生物のタンパク質の耐圧性の獲得は複雑な要素が絡み合って実現されていると考えられてきたが、今回の実験から364個のアミノ酸のうちわずか1個のアミノ酸の違いで実現されていることがわかった。

(via 名古屋大学