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顔写真に水玉を貼り付けた「ハスコラ」が気持ち悪い理由

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顔写真に「水玉模様」を貼り付けたコラージュ「ハスコラ」がなぜ気持ち悪く感じるかについて、心理学やデザインの観点から検討した結果を筑波大学の研究グループが発表しています。




人間の顔写真にレンコンの穴のような水玉模様を貼り付けたものは「ハスコラ」と呼ばれてます。このような画像はとても気持ち悪く感じてしまいますが、なぜ私たちはある特定の模様に対して強い「嫌悪感」を抱くのでしょうか。

この疑問について検討するため、研究グループはハスコラ画像が気持ち悪さを引き起こす仕組みを「模様と顔画像の向き」に着目して詳しく調べました。

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実験で用いた画像の説明(筑波大学)

実験では、学生など24名の男女の被験者に「正立顔」「倒立顔」「正立顔に水玉模様」「倒立顔に水玉模様」の写真を提示しました。

それぞれ各4枚、合計16枚の写真を1枚ずつ見せて画像に対して感じる嫌悪感を9段階で回答してもらいました。

つまり、通常の顔と上下を逆さにした顔でどのような変化が生まれるかを調べたというわけです。その結果、「同じ顔」と「同じ水玉模様」から構成されているにも関わらず、上下逆さの顔では嫌悪感が大幅に軽減されることがわかりました。

顔の向きが上下逆さになると顔を認識する能力が低下するため、背景顔の顔らしさが減少した結果としてハスコラ画像に対する嫌悪感が減少したものと考えられるとのこと。

私たちが水玉模様や縞模様、ヘビ柄などのある種の模様に対して「気持ち悪さ」を抱くのは、模様の形や種類だけによるのではなく、模様と背景の関係を理解することも重要だとしています。

ところで、「ハスコラ」に限らず穴やブツブツの集合体に対して嫌悪感を感じる現象は一般的に知られており、「トライポフォビア」と呼ばれています。

この言葉は十数年前にあるアイルランド人の女性がギリシア語の「trypo(穴あけ)」と「phobia(恐怖症)」を組み合わせて作った造語だと言われています。

なぜブツブツの集合体に強い嫌悪感を感じるかについては、病気や伝染病を連想させるためという理由が指摘されています。健康被害に対する恐怖心を抱くことで自分のからだを守るための、一種の防衛本能ということでしょうか。

他の研究によると男性の場合は10人に1人、女性は5人に1人がトライポフォビアという結果が得られています。男性よりも女性のほうがブツブツに対して嫌悪感を抱きやすいようです。

ブツブツの模様は、自然界に存在する危険な生物にも存在するケースが多く、ブツブツ模様はそうした危険生物を連想するために嫌悪感を抱かせるのかも知れません。