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脳のなかの匂い地図

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¥840
食欲をそそるいい匂い、果実の爽やかな香り。食べ物は匂いがあるから「おいしさ」も引き立つ。いい香りは心地良さや精神の安定につながる。いやなにおいがすれば逃げ出したくなる。しかし、香りを感じる脳のメカニズムは、長らく分からなかった。なにしろ、数十万種類もの香り分子を脳はいったいどのようにして感じるというのか、大きな壁が科学者の前に立ちふさがっていた。本書は、この謎を解き明かしてゆく近年の驚きと新発見に満ちたドラマを再現する。

【内容説明】
香りを感じる脳のメカニズムが、ついに見えてきた!

食欲をそそるいい匂い、果実の爽やかな香り。
食べ物や飲み物の「おいしさ」は、味とともに香りや匂いに強く影響される。
このことは、食べたり飲んだりしているときに、鼻をつまんでみるとよく実感できる。
匂いが消えると、味まで変わった気がします。
花の香りやお香の香りなど、いい香りは心地良さや精神の安定につながる。
逆に、いやな匂いがすれば、その場から逃げ出したくなる。
しかし、香りを感じる脳のメカニズムは、長らく分からなかった。
なにしろ、数十万種類もの香り分子を脳はいったいどのようにして感じるというのか、
大きな壁が科学者の前に立ちふさがっていた。
1991年に匂いを受け取る、匂い分子受容体が発見されてから、事態は急激に変わった。
それから10数年、「脳のなかの匂い地図」が形となって大きな成果を上げ始めた。
本書は、驚きと新発見に満ちたドラマをやさしく再現する。

amazonカスタマーレビューより

匂いを科学としてとらえるための基本が網羅されています。受容体から脳まで、段階的に説明してあり、非常に分かりやすかったです。わかりやすく書いてあるでけでなく、その事実がどのようなことを意味しているのかまで述べられています。非常に奥の深い本でした。

by わさび太郎

においは、料理や人の印象などといったことで良く話題にはされるが、正確な学術情報に基づいた一般本はほとんどない。この本は「脳の可塑性」の権威であった塚原教授(日航事故で逝去)出身の研究者である著者がまとめたもので非常にわかりやすい。欲を言えばもっと進化論などから一般人受けする話題を入れても良かったような気がするが著者の誠実さの表れか。

by koshiyama

匂い・嗅覚というのは、視覚や聴覚などの他の感覚にくらべて感覚器官・神経・感覚野・ネットワークの研究が遅れてきたようです。
ちなみに匂い分子の受容体の研究者がノーベル医学生理学賞を受賞したのは、たしか2004年だったと思います。
著者の森憲作氏は、著明な匂いの生理学者・分子生物学者です。もともとは物理屋さんで(生物学のトップは、意外と物理屋さんが多いです)、大学院を有名な塚原先生(御巣鷹山の日航機墜落事故で亡くなりました)の教室で神経科学を研鑽し、その後群馬大、大阪バイオサイエンス研究所、理化学研究所を経て、東大の大学院で研究を続けています。
この本の中には、そうした森氏の研究室から生み出された発見も書かれていますが、世界の匂い・嗅覚の研究の最先端に触れることができます。
分子から、器官、そして神経ネットワークに至るレベルの違いを超越した研究を垣間見ることができるという点で、この新書は非常に有意義なものと言えます。

by bm8t-tkmt