バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 4.28 Sun

赤肉や加工肉のがんリスク問題、「国立がん研究センター」が公表した見解とは

加工肉

 ソーセージやベーコンなど加工肉に発がん性が認められたとする調査結果を世界保健機関(WHO)の専門組織が発表したことで、各国で波紋を呼んでいます。世界で関係業者などから反発されている中、日本人に関する見解を国立がん研究センターが発表しました。




 WHOの専門組織「国際がん研究機関(IARC)」による専門家の会議で、牛や豚などの赤肉、加工肉の発がん性評価が行われました。その結果、加工肉については「人に対して発がん性がある」と、赤肉については「おそらく人に対して発がん性がある」と判定されました。

 また、2007年にも世界がん研究基金や米国がん研究協会による報告書で、赤肉や加工肉の摂取は大腸がんのリスクを上げることが「確実」と判定されています。赤肉は週に500グラム(調理後の重量)以内、加工肉はできるだけ控えるようにと勧告しています。

日本における状況

 世界各地の赤肉の摂取量は、おおむね1日に50~100グラム、多いところでは200グラムの地域もあるとされています。

 一方、日本人の赤肉や加工肉の摂取量は1日あたり63グラム(赤肉50グラム、加工肉13グラム)で、世界的にも最も摂取量が低い国のひとつです(2013年の国民健康・栄養調査)。

 国立がん研究センターによる調査研究では、女性では赤肉を毎日80グラム(調理前の重量)以上食べるグループでは結腸がんのリスクが高く、それ以下ではリスクの上昇はみられないとしています。

 男性では肉全体で摂取量が最も高いグループでリスク上昇がみられましたが、赤肉との関連性はありませんでした。また、加工肉については男女ともにリスクとの関連はありませんでした。

 結論として、日本人の平均的な摂取の範囲においては、赤肉や加工肉が大腸がんの発生リスクに与える影響はないか、あっても小さいということです。

日本人のためのがん予防法

 同センター予防研究グループでは、さまざまな生活習慣とがんとの関連について評価を行っています。

 赤肉や加工肉と大腸がんとの関連については、6件のコホート研究や13件の症例・対照研究に基づいて「可能性あり」と判定していますが、海外と比べて弱い判定結果になっています。これは、そもそも日本人の摂取量が低いことが影響しています。

 同センターは現状における科学的根拠に基づく「日本人のためのがん予防法」を提示していますが、食事については「塩蔵品を控える」「野菜・果物不足にならない」「熱い飲食物をとらない」を目標に定めています。

 かつては「赤肉・加工肉の摂取を控える」ことも目標にしていた時期もありましたが、日本人での科学的根拠が明確ではないため、総合的な健康影響からある程度の摂取も必要と判断し、現在は取り下げている現状にあるという。

* * *

 結論から言うと、日本人の赤肉や加工肉の摂取量は世界的にみて低く、平均的な摂取量であれば大腸がんへのリスクの影響は考えなくてもよいということです。ただし、欧米でも多いとされるほどの摂取量になれば、リスクを高める可能性が出てきます。

 また、今回のIARCの判定では、主に大腸がんに関するリスクに基づいたものです。しかし、赤肉にはビタミンBや鉄、亜鉛などの有用成分も多く含まれ、少なすぎると脳卒中などのリスクを高めることがあります。

 同センターは、以下のようにまとめています。

総合的にみても、今回の評価を受けて極端に量を制限する必要性はないと言えるでしょう。がんをはじめとした生活習慣病予防、総合的健康の観点からは、まずは「日本人のためのがん予防法」で定められた健康習慣全般に気を配ることが大切です。

(via 国立がん研究センター image by Steven Depolo