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自閉症は似たタイプに共感 福井大など共同研究

 他人の気持ちを理解することが難しいとされる発達障害「高機能自閉症スペクトラム障害」(高機能ASD)の人は、自分と似たタイプには共感しやすいことを、京都大、福井大などの研究チームが確認した。ASDの特性やメカニズムの解明に大きく前進する成果だとして、英科学誌の電子版に発表した。

 ASDでない人を対象にした近年の研究で、自分と似た性格の主人公の物語は理解しやすく、より共感できることが明らかになっている。

 研究チームはASDでも同様の可能性があると考え、ASDとそうでない被験者各約20人を対象に実験した。ASDが登場する物語と登場しない物語を読んでもらい、読後に示した文章が物語に出てきたかどうかを尋ねて理解度を調べた。

 ASDの人はASDが登場する物語を理解しやすく、質問に早く答えられた。さらに内容と結末に一貫性のある物語の方がより理解できた。ASDの人は、自分と似た傾向の人には共感できる可能性を示しており、物語を記憶する際に、文脈を一貫性のある形で覚える傾向がうかがえるという。

 ASDに対する適切な支援者配置や療育、教育プログラムの開発につながる成果で、研究チームに参加した福井大子どものこころの発達研究センターの小坂浩隆特命准教授は「ASDは他者に対する理解や記憶が劣っているのではなく、その仕組みが異なっているだけ」と指摘する。

 その上で「ASDは他者への共感が乏しいといわれるが、自分と似ていない人に共感するのが難しいだけかもしれない」と話す。今後は子どもを対象に研究を進めるとともに、ASDの人同士が共感できるかをさらに検討する。

 また、福井大医学部附属病院では、ASDの治療で脳内ホルモン「オキシトシン」を投与する臨床研究を行っている。小坂特命准教授は「投与の効果が確認できた人は多い。さらに研究を進め、近い将来に薬剤としての認可を目指したい」とし、ASDの人の協力を呼び掛けている。

 出典[福井新聞]