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レバ刺しの復活はあるか?検証されている殺菌方法とその問題点とは?

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焼肉店で提供された牛レバーの生肉で5人が死亡した平成23年の食中毒事件を受け、平成24年から禁止された「レバ刺し」。厚生労働省は「レバー内部を殺菌でき、安全性を確保する方法が確認できれば、規制の是非を再度検討する」としていますが、実は安全に食べる方法がすでに検証されており、もしかすると復活する可能性があるという。




飲食店でのレバ刺し提供が禁止されたことによる業界への経済的影響は、百数十億円とも試算されています。1日も早い禁止解除が望まれていますが、実は安全性さえ確認できれば再び提供できる可能性は残されています。厚労省は禁止した平成24年当時から研究班を設置して、十分な殺菌効果のある方法を研究しています。

3つの殺菌方法が検討されている

飲食店で再び生肉を提供するためには、加熱することなく十分に殺菌する方法を検討する必要があります。現在、候補となっているものとしては、(1)塩素系消毒薬(次亜塩素酸ソーダ)を使った方法、(2)高圧処理、(3)放射線(ガンマ線)照射、の3つの殺菌方法があります。

このうち、塩素系消毒薬については、殺菌効果にばらつきがあること、そしてレバー内部の殺菌が不十分であることがすでに判明しているそうです。

一方、高圧処理については、殺菌効果は十分ではあるものの、処理後にレバーの色が抜けたり肉が硬くなったりするなど、肉質の変化がみられることから飲食店での提供に不向きであることが確認されました。

放射線照射は「におい」の問題がある

最後の方法「放射線照射」については、見込みはあるものの「におい」の問題が残るという。

研究の結果、十分に殺菌するためには7キログレイの放射線量が必要だが、これが予想外に多かった。食品規格を決定する国際機関「コーデックス委員会」が定める上限は10キログレイで、実用的に問題はありません。ただ、線量が比較的多めであることは間違いなく、その結果としてレバーが変質してしまい、独特の「におい」が発生するという。

平成25年度の研究班の報告書によると、「硫黄計の甘い臭気」と表現されています。においについては個人によって感じ方がかなり違うため、ダメなひともいれば全く問題ないというひともいる可能性があります。

特に、「レバ刺し」の食べ方としてはニンニクやショウガの入った醤油やたれなどで食べることも多く、それほど気にならないとも言えます。

殺菌施設の確保という課題

放射線照射による殺菌方法を実用化するためには、照射施設の問題があります。食品照射のための施設としては、現在は北海道にある「ジャガイモの芽止め」を目的とする施設だけで、使用する線量も違い、北海道という立地の面でも難しいのではないかと言われています。

ただし、放射線照射を使った殺菌方法によって生肉の提供が将来的に認められるようになれば、新たに専用の施設を提供する企業も出てくる可能性もあるため、まったく期待できないとも言えないかも知れません。

いずれにしろ、現在のところ最も現実可能な方法は「放射線照射」ということになりそうです。厚労省研究班による報告書は、来年春にもまとまる見込みとのこと。