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人体特許: 狙われる遺伝子情報

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わずか1万円の遺伝子レベルの検査で、将来、自分がかかる病気がわかるとしたら、あなたはどうしますか?乳がんリスクのために、乳房を二つとも切除したことを発表した女優のアンジェリーナ・ジョリーのニュースは、遺伝子検査時代の到来を世界に知らしめた。子どもの知的能力や芸術、運動能力を占う企業も上海に誕生した。ますます激化する遺伝子ビジネスで、人体にかかわる物質すべてが特許戦争の波の中へ。

商品の説明

内容紹介
 わずか1万円の遺伝子レベルの検査で、将来、自分がかかる病気がわかるとしたら、あなたはどうしますか? 乳がんリスクのために、乳房を二つとも切除したことを発表した女優のアンジェリーナ・ジョリーのニュースは、遺伝子検査時代の到来を世界に知らしめた。
■エイズにならないための遺伝子を特許申請
■ぜん息の遺伝子が特許として認められた
■ヒトの遺伝子が次々と特許の対象に
■各種のがんや生活習慣病、嗜好まで「特許」の対象に
■山中伸弥教授のiPS細胞をめぐり特許争奪戦勃発
子どもの知的能力や芸術、運動能力を占う企業も上海に誕生した。ますます激化する遺伝子ビジネスで、人体にかかわる物質すべてが特許戦争の波の中へ。
NHKスペシャル「人体特許」のプロデューサーが、その後の調査を経て書き下ろす。
内容(「BOOK」データベースより)
 わずか1万円の遺伝子レベルの検査で、将来、自分がかかる病気がわかるとしたら、あなたはどうしますか?乳がんリスクのために、乳房を二つとも切除したことを発表した女優のアンジェリーナ・ジョリーのニュースは、遺伝子検査時代の到来を世界に知らしめた。子どもの知的能力や芸術、運動能力を占う企業も上海に誕生した。ますます激化する遺伝子ビジネスで、人体にかかわる物質すべてが特許戦争の波の中へ。

レビュー(Amazonより)

本書は、NHK出身の科学関連のジャーナリストによるドキュメンタリーである。自然科学畑出身のジャーナリストらしく、実にきめ細かな取材と検証、そして何よりも遺伝子工学・医療への造詣が深いことに驚かされる。本書の趣旨は、特許王国米国を中心として、国際的な特許争奪、その対象が副題『狙われる遺伝子情報』とあるように、ヒトのDNAの『遺伝子情報』に関する国際的実状に対し日本を含めた現状批判及び提言と言えようか。

話題はまず、DNA内の遺伝子情報の塩基配列(AGCTの一部の配列)には、ある遺伝子情報を含む配列の一つが「変異」している場合があり、当該「変異」を持つ遺伝子情報(塩基配列)が、特定疾病の阻害要因または病因になるという「発見」から紐解く。その例としてHIVに感染しない遺伝子、最近話題となった米国の女優の乳房全摘手術に見られる乳ガンを励起しやすい遺伝子の存在などから、かかる病因または阻害因子となる遺伝子の「発見」(一部その技術的用法など含む)に対する特許取得を、米国・欧州・日本の事情を批判的視点から概観する。

著者はかかる人類の謎に関わる「発見」を、特許として一部個人や企業が独占し巨額の利益を得ることは医学の阻害(費用高騰要因)であり、「発明」ではないという主張にある。著者の意見は充分に理解できるが、他方でDNAの遺伝子情報から特定疾病との関係を「発見」することに、多大の費用と時間のかかることもまた事実だろうとは思う。そして著者の視点は、医学上の遺伝子治療も(世界的に)特許対象となりつつあることにも疑問を投げ掛ける。エピソードとして、山中教授のiPS細胞を巡る熾烈な特許争奪戦も詳述している。著者の言うように、人類発展・平和と安寧をもたらす医療技術は廉価かつ人類共通の資産とすべきことに異論はない。ただ著者も指摘するTPPにおける特許、医療制度など、理想と現実の乖離は大きいだろう。しかしそれを克服するのも人類の叡知ではある。本書は医療(遺伝子医療)と特許について、深く考えさせる良書である。