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ブタの臓器を使った「異種移植」に向けて研究が進んでいる ゲノム編集技術も活用

豚

 臓器移植における最大の問題は、患者数に比べてドナーが少ないことでしょう。臓器不足を解消するための解決策として、他の動物の臓器を移植する「異種移植」という方法があります。とくにブタの臓器の利用が期待されていますが、実現に向けて研究が進んでいるようです。




 異種移植においてブタが最も有力だといわれる理由は、臓器の大きさや生理的機能が人間に近いからだといわれています。しかし実用化するためには、移植による拒絶反応や人間に悪影響を与える内在性のウイルスの問題を解決する必要があります。

 米ハーバード大の研究チームは、最近よく耳にするようになった「ゲノム編集」技術でこれらの問題を解決する研究を進めているようです。

 研究チームは、最新のゲノム編集技術「Crispr/Cas9システム」を使って拒絶に関わる免疫系やウイルスの感染に関わる60個の遺伝子を改変した「ブタの胚」を作製しました。

 改変した遺伝子には、ブタがもともと保有する内在性のウイルス「Porcine Endogenous Retroviruses( PERVs)」も含まれます。このウイルスはブタのなかでは無害ですが、人間に移植した際には有害になる可能性があるという。これらの遺伝子を改変し、不活性化させることに成功したとしています。

 ほかにも、体内での血栓の形成などの副作用の可能性のある遺伝子についても改変に成功したとしています。

 実際に副作用のない臓器に改変が成功しているかどうかは、移植をして安全性を確認するほかに方法はありませんが、研究チームはすでに遺伝子改変された移植用ブタを育てる設備の準備を進めているそうです。

(via WIRED image by Boston Public Library