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スプリンターは鍛えすぎると重くなり、スピードが出にくくなるのか

スプリンター、つまり短距離走者は脚力を鍛えすぎると脚が重くなってしまい、逆にスピードを出しにくくなるのではないか。そのような疑問を解決する研究が行われています。




体を鍛えると筋肉が肥大して重くなります。一般的には物体は重くなると動かしにくくなることから、鍛えれば鍛えるほどスピードを出しにくくなる可能性はあります。

特に短距離を走るスプリンターは一般的な人から見ても太い脚をしていることが明らかにわかります。

走る動きにおける脚の動きは、股関節を中心とした脚の回転運動つまり「下肢のスイング」と捉えることができます。そのため、このスイングに関わる力学的要素を調べることで、実際に鍛えられたスプリンターの脚がその重さによって動かしにくいのかを明らかにすることができます。

早稲田大などの研究グループは、スプリンターと一般成人の脚についてMRI画像を解析して、その脚の身体形状を詳しく調べました。

その結果、大腿(太もも)、下腿(ふくらはぎ)、足部とではスプリンターと一般成人の質量差に違いがあることがわかりました。

それぞれの部位を比べてみると、一般成人と比べて重いのは足部ではなく下腿よりも上で、特に重さに差が出ているのは大腿であることがわかります。

鍛えられたスプリンターの脚は、一般成人と比べて大腿で大きくなりやすく、先細りの形状をしていることになります。

物体を回転させるときの動かしにくさは「質量」×「距離の2乗」で計算される慣性モーメントを比較することで明らかになります。

そこで、脚の重さの分布を考慮して慣性モーメントをスプリンターと一般成人で比較したところ、体全体に対する脚の質量比は大きいにも関わらず、脚の回転のしにくさについては有意な差がないことが明らかになりました。

これは、回転軸となる股関節に近い大腿だけに質量差があって、股関節から遠い下腿と足では質量差がない形状が要因になります。

つまり、鍛えられたスプリンターの脚は「先細り」の形状をしているために、下肢のスイングを素早く行う全力疾走には優位に働いているようです。

このように、スピードを求められる競技においては、体幹に近いところや大腿、上腕などがトレーニングによって発達し、そして末端に近づくほど細くなる形状が最適解な形状と言えるのかも知れませんね。

鍛えられたスプリンターの下肢は、本当に動かしにくいのか?身体組成や形状を従来の5倍の分解能で分析できる画像解析手法を開発