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血管新生における細胞の複雑な運動を解明

血管新生

 血管新生で血管が伸長する際に、血管内皮細胞の運動を制御する仕組みをコンピュータシミュレーションで明らかにしたと、東京大の栗原裕基教授らの研究グループが19日付の科学誌「Cell Reports」で発表した。さまざまな組織の形態形成の解明にもつながるという。

 生物は細胞が寄り集まった多細胞体だが、細胞の集まりが組織や器官など秩序ある形態をつくる仕組みについてはほとんど分かっていない。

 中でも血管は体中に効率よく酸素や栄養源を供給するため巧妙な枝分かれ構造をとるが、研究グループはこれまで、新しく血管がつくられる際の血管内皮細胞の動きをリアルタイムで可視化することに成功している。

 今回はさらに、血管の伸長では細胞が自発的に動く過程(自律的過程)と隣接した細胞から影響を受けて動く過程(協調的過程)が共存することで、全体の動きが統制されることがわかった。

 血管新生で見られる複雑な細胞集団の動きを制御するのは、細胞一つ一つの動きの「確率的な変化」として説明できることをコンピュータシミュレーションで実証した。一方、血管伸長に必要な先端細胞の動きは後続の茎細胞との相互作用でより厳密に制御されることがわかったという。

(via JST