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急性骨髄性白血病の発症に関与する遺伝子を特定 「PLZF遺伝子」

 血液のがんである急性骨髄性白血病が、血液の細胞内で特定の遺伝子の働きが活発化することで発症する仕組みを、三重大大学院医学系研究科の野阪哲哉教授(52)、小埜良一講師(42)らの研究グループが解明した。米国血液学会の専門誌電子版に発表した。

 研究グループは、全ての血液細胞のもとになり、赤血球や血小板などに変化する「造血幹細胞」に着目。白血病になったマウスを使い、この細胞中の「PLZF遺伝子」の働きを2~3割程度に抑えると、生存期間が6~8日延びた。一般的にがんは複数の遺伝子の異常が重なって発症するため、一つの遺伝子の働きを抑制するだけで生存期間が延びるのは「驚くべき現象」(研究グループ)という。グループは「急性骨髄性白血病は造血幹細胞でのPLZF遺伝子の活動が関与している」と結論付けた。

 分子遺伝学が専門の野阪教授らは「今後は患者の細胞を使った研究を進め、新たな治療法の開発と治療後の再発の予測につなげたい」と話している。

 急性骨髄性白血病は、国内で年間に3千~4千人が発症するとされている。急速にがん細胞化した白血球が異常に増えることで、正常に血を作れなくなる。

 出典 中日新聞