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自然リンパ球によるアレルギーを抑える仕組みを解明

自然リンパ球によるアレルギーの抑制機構

 自然リンパ球によって発症するアレルギー性炎症を抑える仕組みを解明したと、理化学研究所の茂呂和世チームリーダーらの研究グループが発表した。アレルギー性疾患の新しい治療法の開発が期待される。

 研究グループは2010年にナチュラルヘルパー細胞(NH細胞)を発見し、その後さまざまな類似する細胞が報告されている。これらは「2型自然リンパ球(ILC2s)」と呼ばれており、T細胞やB細胞、IgEに依存しない新たなアレルギー性炎症「自然アレルギー」の発症に関わることが明らかになってきた。

 今回の研究では、ILC2sを抑制する仕組みを解明するため、ILC2sの表面に発現しているサイトカイン受容体を調べた。その結果、インターフェロン(IFN)とインターロイキン27(IL-27)がILC2sの増殖とサイトカインの産生を抑制することがわかった。

 次に、IFN受容体を欠損したマウスに寄生虫を感染させてILC2sによる炎症への影響を調べた。その結果、IFNがILC2sによる炎症の収束に重要であることが明らかになった。

 さらに、IL-33誘導性の喘息モデルマウスを使い、IFNやIL-27がILC2sによるアレルギー症状を抑制できるかどうかを調べた。その結果、IL-33とともにIFNまたはIL-27を投与した肺では、ILC2sの増殖が抑制され、好酸球浸潤や粘液過剰分泌、気道過敏性が抑えられることがわかった。

 寄生虫の感染では、IL-33によってILC2sが活性化して寄生虫を排除し、その後はIFNやIL-27によってILC2sを抑制して炎症が収束するという。

 ILC2sは皮膚や腸管、肺などアレルギー疾患と関連する部位に存在し、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、喘息などに関与すると考えられるという。

(via 財経新聞