がん細胞の運動を制御する新しい仕組みを発見したと、理化学研究所の吉田稔主任研究員らの研究グループが米科学誌「Science Signaling」で発表した。新しいがん転移治療法の開発につながることが期待できるという。
がん細胞の運動や浸潤に重要な働きをするタンパク質として「コータクチン」が知られており、がん転移治療の標的分子として注目されている。コータクチンの活性はアセチル化などの翻訳後修飾によって制御されるが、詳しいメカニズムは明らかになっていない。
研究グループは、コータクチンが核と細胞質を行き来するシャトルタンパク質であることを突き止め、さらにタンパク質「Keap1」がコータクチンと結合することでこのタンパク質を細胞質にとどめることを明らかにした。
また、Keap1は外部からのシグナルに応答してコータクチンを細胞辺縁部に運ぶことで、細胞の運動を増進することを突き止めた。
一方、コータクチンがアセチル化するとKeap1との結合が阻害されて辺縁部へ移動できなくなることもわかった。つまり、コータクチンのアセチル化を増やすとがん細胞の動きが止まるのだという。
コータクチン脱アセチル化酵素の阻害剤はがん細胞の動きを止めるため、がん転移の新たな治療薬開発につながる可能性がある。
(via 理化学研究所)