バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 5.4 Sat

肺がんのがん転移を促進するセラミド合成酵素を発見「CERS6」

 肺がんではセラミド合成酵素の一種が過剰発現してがん転移を促進していることを発見したと、名古屋大の髙橋隆教授らの研究グループが科学誌「Journal of Clinical Investigation」で発表した。このタンパク質を標的とした新しいがん治療法の開発につながる可能性がある。

 肺がんは日本でのがん死亡原因の第1位であり、年間7万人以上が死亡している。初期の肺がんは手術ができるが転移をともなう進行がんでは化学療法や放射線治療のみが行われているのが現状で、治癒することはまれだという。

 研究グループは、肺がんでセラミド合成酵素の一種「CERS6」が過剰発現し、がん転移を促進していることを発見した。この酵素は「C16セラミド」と呼ばれる脂質を合成してがん細胞の転移を促進するという。

 また、C16セラミドは細胞死を誘発する物質としても知られている。そこで、C16セラミドの代謝上流物質であるDMPCを投与したところ、CERS6によってC16に代謝されて細胞死が誘導されることがわかった。

 研究グループは、がん細胞のもつ転移活性を利用して細胞死を誘導する新しいがん治療法の実現につながることが期待されるとしている。

(via 名古屋大学