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光駆動でセシウムを細胞外に汲み出すタンパク質の作製に成功

 光エネルギーを使ってセシウムイオンを細胞外へ汲み出すタンパク質を作り出すことに成功したと、名古屋工業大の神取秀樹教授らの研究グループが米科学誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」で発表した。環境中に排出された放射性セシウムイオンの回収技術に応用できる可能性がある。

 光のエネルギーを使って荷電粒子を自由に運ぶことができればさまざまな応用が可能になる。電子の輸送は植物の光合成や太陽電池で実現しているが、水素イオンより重い荷電粒子については自然界でも人工的にもほとんどない。

 研究グループは2013年、光エネルギーを使ってナトリウムイオンを輸送するタンパク質を海洋性バクテリアで発見した。

 今回の研究では、このタンパク質のアミノ酸配列を変えることでセシウムイオンを輸送するタンパク質の作製に成功した。

 大きなイオンを通すためには、通り道を広く小さなアミノ酸を導入して通り道を広くする必要があると考えられるが、実際には大きなアミノ酸を導入することでセシウムイオンの輸送が実現できたという。

 福島原発の事故以来、水中に含まれる放射性セシウムイオンが大きな環境問題となっている。今回の光エネルギーを利用したセシウムイオンの輸送システムによって、全く新しい回収法につながると期待される。

(via 名古屋工業大学