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急性腎不全にタンパク質「AIM」が効果、効率的な治療法の開発に期待

急性腎不全 急性腎不全の治療につながる血中のタンパク質を突き止めたと、東京大の宮崎徹教授らの研究グループが科学誌「Nature Medicine」で発表した。急性腎不全の再発や慢性化のリスクを低下させる可能性が高く、効率的な治療法開発につながると期待される。

 急性腎不全(AKI)は、腎臓の虚血や細菌感染、薬剤などさまざまな原因で急速に腎機能が低下する病気で、致死率も高い。また、急性腎不全を発症した患者は慢性化するリスクも高まる。

 急性腎不全が生じると尿の通り道「尿細管」に細胞の死骸などの「ゴミ」が詰まり、腎機能が低下する。

 研究グループは、腎機能が低下すると血中のタンパク質「AIM」が尿中に移行してゴミに付着し、これが目印になり周囲の細胞が詰まりを解消することを明らかにした。

 また、AIMを持たないマウスが急性腎不全になると腎機能が悪化し続けて多くが死に至ること、AIMを持つ正常なマウスでも重症の急性腎不全を起こすと体内のAIM量では十分にゴミが処理されず、やはり多くが死んでしまうことがわかった。

 さらに、これらのマウスにAIMを投与すると尿細管の詰まりが解消され、腎機能が改善して致死率が著しく低下することも突き止めた。

 腎機能の低下時における血中AIMの挙動はヒトの急性腎不全患者でも同様に観察されるため、AIMによる治療はマウスだけでなくヒトでも有効と考えられるという。

(via JST