葉緑体が植物の成長を制御する新たな仕組みを発見したと、東京工業大の増田真二准教授らの研究グループが英科学誌「Nature Plants」で発表した。貧栄養条件に耐性を持つ植物の開発につながる成果だという。
細菌には、飢餓や温度など環境変化に応答するための「緊縮応答」と呼ばれる代謝制御機構がある。近年のゲノム解析によって緊縮応答に関与する遺伝子が植物や動物にも保存されていることがわかってきたが、真核生物における機能は不明だった。
研究グループはシロイヌナズナで緊縮応答の役割を調べたところ、この機構を担うタンパク質がすべて葉緑体で働いていることがわかった。
そこで、緊縮応答を過剰に引き起こす組換え植物を作出したところ、葉緑体の遺伝子発現や代謝産物量が減少し、葉緑体のサイズも小さくなることが明らかになった。
一方、この組換え植物は野生型と比べて通常条件下では約1.5倍に大きくなること、貧栄養条件では野生型は枯死するが組換え体は緑を保ちつつ光合成を継続することがわかった。
植物における緊縮応答では、葉緑体の遺伝子発現や代謝を調節することで植物の成長を制御しているのだという。
今後は、葉緑体における緊縮応答を引き起こす環境要因や、その過程について明らかにしていくとしている。
(via 東京工業大学)