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神経伝達物質「グルタミン酸」のクリアランス効率を高める仕組み解明

グルタミン酸の除去

 神経細胞の活動に伴い細胞外に放出される興奮性神経伝達物質「グルタミン酸」を周囲の細胞が吸収する効率を高める仕組みを突き止めたと、名古屋大の木下専教授らの研究グループが英科学誌「Nature Communications」で発表した。てんかんや統合失調症などの病態解明につながるという。

 脳内の神経細胞はシナプスを通じてほかの神経細胞とネットワークを構築しており、その活動に応じてシナプスからは神経伝達物質が放出される。中でもグルタミン酸は最も重要な興奮性の伝達物質で、シナプスから放出された後は直ちに除去される機構がある。

 放出されたグルタミン酸の除去効率が落ちると、シナプス周辺に残留するため神経細胞の興奮を長時間持続させ、神経機能に支障をきたす。

 研究グループは、シナプスを包み込むグリア細胞の突起には「CDC42EP4」を含む10種以上のタンパク質複合体があり、グルタミン酸を吸収して除去するトランスポーターをシナプス周囲に集める働きがあることを明らかにした。

 また、CDC42EP4を欠損したマウスではトランスポーターがシナプス周囲から遠ざかり、グルタミンの除去効率が低下して運動能力が低下したため、小脳の運動制御機能に必要であることがわかった。

(via 名古屋大学