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上皮組織が時計回りに回転する仕組みを解明、上皮細胞が「つなぎ替え」

ショウジョウバエの雄性外生殖器

 ショウジョウバエの雄の外生殖器を取り囲む「上皮細胞シート」が時計回りに回転する仕組みを解明したと、理化学研究所の倉永英里奈チームリーダーらの研究グループが英科学誌「Nature Communications」で発表した。

 受精卵から体が作られる過程では、初めに作られるシート状の上皮組織が単純な変形を経て複雑な器官を作り上げる。しかし上皮組織がどのようにして、接着を保ったまま移動できるのか、同一方向に協調的に動くのかについて詳しく分かっていない。

 ショウジョウバエの雄の外生殖器は時計回りに1回転しながら作られるが、研究グループは2011年、この外生殖器回転が周りの上皮組織の回転によって引き起こされることを発見した。

 今回の研究では、上皮組織がどのようにして時計回りに回転するのかを調べるため、ライブセルイメージングと呼ばれる方法で上皮組織を構成する細胞について個々の動きを追跡、解析した。

 その結果、上皮組織の回転は、円盤状に寄り集まった上皮細胞の集団が時計回りに移動することであることがわかった。また、円盤状に配置された上皮細胞は互いに接着したままで頻繁に「つなぎ替え」を起こして動いていることが観察された。

 細胞が集団移動する際は通常、移動方向からの誘引物質とそれに応答するリーダー細胞が必要とされている。一方、今回の円盤状の上皮細胞集団ではリーダー細胞がないため、外からの誘導がなくても個々の細胞が協調的に動いて形作りを実現することが明らかになった。

 さらに、接着した上皮細胞集団が左右対称のときは安定して動かず、非対称になることで動き出すことがわかった。

(via 理化学研究所